第五章 撮影の苦労と幸福と

   アルバイトで体験したカラミは、正直なところ悪くなかった。いや、楽しかったとさえ言えるかも知れない。なんせポーズによってはエロ本ですら見られない部分がどアップで正視できるし、カメラの視線からそれを隠すようなフリをして触ることさえ出来る。また、隠すようなフリしてひそかに指を動かしたりなんかしちゃって、女の子がヒクヒクしたって文句を言う奴はいない。その頃にはまだセクハラなんて言葉はなかったからね。
   で、いよいよレズの撮影だ。好きなマソコが二倍になるんだから嬉しさも二倍……とは行かなかった。
   頭の悪そうなネーチャン二人、カメラマンは留置場帰りのMという男だ。もとはモデルクラブを経営していたが認可を取ってないのでパクられてカメラマンに転向した。写真はまったくの素人である。が、なに、ペンタの67と大型ストロボさえ持っていれば、腕なんか悪くたって仕事には困らない世界だ。ちなみに現在でもヌードモデルの斡旋で正式な認可を取っているプロダクションはほとんど存在しない。基準がえらく厳しいのと、正規のマージンでは二割しか抜けないのでみんなモグリだ。一応は「制作」込みで女の子も出してます、という言い訳になっている。
   モデルにポーズをつけるのは編集者の仕事だ。そっちの足をこっちに、手はそこで、顔は横向いて……とか指示して行く。なんせ足だけで四本あるんだから大変だ。一人の娘にポーズつけてるあいだにもう一人がだれて崩れてしまう。しまいには女が二人とも仕事の邪魔をしている敵に見えてきた。しかも、女が二人いれば常にそうであるように、一人はよりブスだ。そのよりブスのほうがふて腐れて膨れっ面している。これも世の中の常識だ。ブスは常に性格が悪い。……と、そんな世の中の真理というものを学んでいるうちに、頭が痛くなってきた。いや、ホントに頭痛に襲われたのだ。
   「そうか、原因はこれだ」と、思い当たるものがあった。匂いである。ラブホテルの密室で四人、しかも女の子たちは裸。さっきから牝の体臭みたいなのがねっとりと澱んでいるのだ。トイレに駆け込んだが吐くまでには至らず、かろうじてこらえた。
   と、そんなわけでレズ撮影は一発で懲りた。どーせ読者にもウケないんだから、そんなもの無理して撮ることもない。
   もっとも同じ体験をその後もしたことがある。それは乱交の撮影で、やはり「疑似」ではあったのだが、狭い倉庫に裸の女が5人ほどいた。女ってのは複数裸で存在すると臭いものである。
   裸の女を目の前にして吐く、という光景は、その後バイク乗りの集団にストリッパーを出前した時に見たことがある。参加者に舞台に乗ってもらい生クリームをおっぱいに塗らせていたら吐いた奴がいたのだ。実に女の身体というのは凶器ですらある(W
   そんなわけで幸いにも女体アレルギーにもならずに無事、通過儀礼を終えて一人前のエロ本屋へと育っていった彼だが、予想もしてなかった事態がアリス出版では起こっていた。彼がこの道に足を踏み込むきっかけになった当の亀和田氏が辞めさせられてしまったのだ。というか、亀和田氏を辞めさせるために彼が雇われたというのが、真相に近い。いくらサボっていたとはいえ彼の担当していた雑誌はいくつもあったのだから。
   そして最初の給料日、彼は会社の近くの質屋でニコンの古いFを買った。かろうじて撮影に使えるカメラである。そしてそれからも給料の出るたびに、F2、ELWと、カメラを揃えて行くのだった。
どアップで正視   シックスナインのポーズがモロ、丸見えだ。そればかりか生理中の女の子とカラんで口のまわりを血だらけにした経験もある。生理じゃなくてもタンポン挿れるのは、撮影の「疑似性交」におけるチンコ除けのマジナイなのだが、その娘はタンポンを使ったことがなくて「一番多い日」なのに生で垂れ流しなのだった。さすがに悪戯する気にはなれなかった。
文句を言う奴はいない   そこら辺は現場の雰囲気と成り行き。女の子を泣かせちゃったり怒らせちゃったりしては、もちろん、いけない。が、相手が気が弱くて文句を言えなかったりすると「ついうっかり」チンコが挿入っちゃったりすることもある。鬼畜だね。ちなみに写真の女は「大物」で、指なら5.6本は楽に挿入った。

留置場帰り   あと、SM撮影でモデルの陰毛剃って傷害罪とか、未成年撮って児童福祉法違反とか。前科者の多い世界だ。
ペンタの67と大型ストロボ   ライティングはアンブレラ二灯、左右から。35mm一眼レフと同じ感覚で撮れるペンタとの組み合わせなら、とりあえず写っていることは写っている。決してそれ以上ではないが。正直なところ、恐ろしく下手糞なカメラマンがかなりの確率で存在した。つーか、女を撮るってのは腕より感性だね。駄目なヤツは何十年やっても駄目だ。誰とは言わないが。もっともエロ本業界ではうまいカメラマンもこの組み合わせである。機材でアガリはわからない。
よりブス   絶対に可愛い娘が二人揃うことはない。また、どっちかが絶対にオバサン臭い。または絶対にどちらかが好みではない。レズ撮影の法則である。
複数裸で存在すると臭い   複数の女が助平な男の前で裸になっている状況というのは、本能的に女の闘争心をかき立てるものであって、いつになく特殊なフェロモンを発するのである。そして空中でその二人のフェロモンがぶつかり合って、來々キョンシーズ並のバトルを繰り広げる……んだったりしたらオモシロいなぁ。
凶器ですらある   饅頭怖い
ニコンの古いF   レンズは標準一本あればいい。それがエロ本屋の世界である。が、実はニコンでは役不足。まだ電子製版が導入される以前の業界では、やはりハッセルが一番で、撮りやすさでペンタの67(通称バケペン)が対抗、といった状況だった。フィルムにコダクローム使えば中判に対抗できたのだが、当時は東洋現像所でしか現像できず、陰毛とかはみ出していると返してくれなかったのでパス。自販機業界はギリギリの勝負をしてたからね。

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