

| 恋をしたことのある人なら誰でも知っている。叶わぬ夢は、それが叶わぬがゆえに美しいという事を。 人はみな、等しく幸せだという。ビル・ゲイツの一人息子も、エイズに冒されて死にかかったマニラの幼い少女娼婦も。人はみな、等しく幸せだという。本当だろうか。だが、もしそれが現実逃避の嘘だとしても、人は誰しも夢を抱く権利だけは等しく持っている。 世界征服を夢に描くか、自分を捨てた母親との平穏な生活を夢見るか、どちらが幸せかなんて、誰にも決められない。 21世紀最初のクリスマス。例年のように、ここ、バンコクの街も華やかなイルミネーションに彩られていた。子供たちは無邪気に走りまわり、恋人たちは手をつないでゆっくりと歩き、そして電気のない国の電気のない村から送られてきたエネルギーが昼をも欺く電飾と化して、帝都の住人たちの幸福そうな顔を染めている。 |