やまだひろなが・平川貴士撮りおろし!! 「星になった少年」が2005年の夏休み映画で公開されるというので、まあ、便乗ではあるのだが、タイの象を取材した写真集を作ることになった。六月中旬に訪タイ、ランパーンの国営象センターとアユタヤの象村を廻る事になる。タイでは街をうろつく野良象が社会問題になっていて、バンコク市当局が象を捕まえては、どんどんアユタヤに送り込んでいる、という話を聞いていたからだ。

現地在住の友人であり、タイを拠点にアジア各地で活動しているカメラマン平川氏が、事前に色々と調べてくれた。ロケでは彼はコーディネータ兼運転手兼カメラマンとして大活躍。全走行距離1400km、撮影枚数が、おいら1500カット+平川氏500カットと、タイトなスケジュールながらも目標達成する。これは、そんな取材旅行の記録だ。     やまだひろなが
本書はアジア象の故郷ともいえるタイ国を舞台に、象と人間がどのようにかかわり、現在、どんな問題を抱えているのかを取材したものです。愛くるしい仔象、飼い主に見捨てられた野良象、病院で横たわる年老いた象……日本では決して見ることのできない象たちの真の姿をあますところなく紹介しました。     監修/坂本小百合
元はといえばバンコクの街を徘徊していた野良象から話は始まる。どこか浮かれた熱帯のクリスマスの街、その闇から闇へ、巨大な翳のように身を運ぶ不思議な動物を発見したのがきっかけだ。使い慣れたニコンF3にとっておきのノクトニッコールを付けて、彷徨う野良象を追った。この一連の写真はバンコクの混沌を象徴する光景としてWEBでは好評だったが、おいらは女撮りのパートタイム・カメラマンなので、特にどこに売り込むとか、そういう事もなく終る。が、世の中には見ている人もいるもので、映画「星になった少年」の公開が決まった頃になって一本の電話がかかってくる。旧知のあおば出版編集者からだ。「今年は象が来ます!! あれ、写真集にしましょう!!」こちらに異存があるはずもなく、話はとんとんびょうしに決まる。すぐに、バンコクの平川氏に電話をかけた。映画の舞台になったランパーンの象センターは、おいらも昔、いったことがあり見当もつくのだが、写真集のコンセプトである仔象と小僧が揃うのはアユタヤの象村ではないか、と、さすがはタイ在住で日本の著名カメラマンのコーディネータも数多くつとめるだけあって、穴場を探してきてくれる。ここは一般に公開されている観光名所ではなく、古都アユタヤで観光客を乗せて稼ぐ象たちが日常生活を送る土地だ。
バンコクで合流。長く続く不況ですっかり元気をなくした日本と違って、タイは高度成長まっ盛りだ。バンコク一、高くて高いレストラン(超高層の屋上、吹きっさらし)で高価なビール飲んで、仕事の成功を祈り、英気を養う。更にタニヤのカラオケバーに移動。この、バンコク有数の繁華街にも、ちょっと前までは野良象が彷徨っていたんだが、最近は見ない。街はすっかりお洒落に変わった。ところでアユタヤでの仔象と小僧のカラミは土日がベスト、という事で、ランパーンから撮影は始まる。「象使いの子供だって学校に行くんだよ」とは象使いの親分の言葉だが、なんとなく象使いの子供は学校なんか行かないものだと思っていた。平川氏の運転で北部へ。早朝バンコクを出て到着は暗くなった頃だ。ランパーンは、おいら、大好きな街だ。水力発電所と陶磁器製造が主な産業で、夜になると馬車が走りまわる、心地よい田舎町だ。行きつけのレストランでビールを飲み倒し、翌日からの仕事にそなえて英気を養う。なんか英気ばっかり養ってるね。タイ入りして三日、まだ仕事は始まらない。
朝から象センター入り。ここは森林局が運営する施設で、タイ北部の、主にカレン族があやつる象が集められている。タイでは象は北部のカレン族系のものと、東北部イサーン系のものとに分類されるのだ。広大な敷地にゆったりと暮らす象たちは、チェンマイからスコータイへ車で移動する観光客を相手に稼いでいる。まあ、国営の施設なので、のんびりしたペースではあるが。生まれて間もない仔象が二頭、母親とともに暮らしていた。仔象は三歳になるまでは母親の乳を飲んで育つ。あまり早く乳離れさせると栄養不足で骨に異常が出るんだそうで、大事にされているようだ。また、ここには病気の象の病院やリハビリ施設もあり、アメリカ人の獣医見習いとか、日本人の象使い志願者とかも滞在していたりする。営利目的の施設ではないが、観光客が集まると象のショーとかも見せてくれる。牧歌的な光景ではあるが、カレン族といえばビルマ政府軍とゲリラ戦をやっていて、象たちも背に重機関銃しょって戦っているらしい。雨季のジャングルは自動車などの機動力が使えないので、象部隊の強さといったら、伝説的ですらある。
ここでは象に揺られてのジャングル・トレッキング体験ができる。モトクロス・バイクですら難渋するようなぬかるんだ山道を、象はゆったりしたペースで歩く。象は本当は走ると速い動物なのだが、利口なのでふだんはのんびり歩くのだ。象センターのスタッフをモデルに、こちらも象に乗って撮ったが、ジャングルは暗いので、けっこうブレてるっぽい。ストロボ焚いてもスローシンクロなので止まらない。取材ということで象センターには色々と協力していただいた。ここで感謝しておこう。夕方、まだ暗くならないうちに撮影は終了した。次の予定地はアユタヤ。600kmほど離れている。

アユタヤ編へ続く      back_to_index