やまだひろなが・平川貴士撮りおろし!! アユタヤ編

タイ北部ランパーンの象センター取材を終え、車は一路、アユタヤへ。延々とまっすぐな道が続く。日が暮れるとスコールに襲われた。さすがは雨季の東南アジア、この世の終わりかと思うような激しい雨が叩きつける。まあ、この時期、これが毎日なんだが。途中、川っぷちレストランで夕食を摂り、深夜アユタヤ着。「600kmだから六時間だな」と冗談叩いていたが、食事の時間をのぞけばそれに近いスピードだった。さすがは普段からブンブンとタイ全土を走りまわっている平川氏の運転である。感謝。
本書はアジア象の故郷ともいえるタイ国を舞台に、象と人間がどのようにかかわり、現在、どんな問題を抱えているのかを取材したものです。愛くるしい仔象、飼い主に見捨てられた野良象、病院で横たわる年老いた象……日本では決して見ることのできない象たちの真の姿をあますところなく紹介しました。     監修/坂本小百合
古都アユタヤで観光客を乗せて歩く象は人気者だ。毎日30頭ほどの象が出勤しているが、実は交代制で、働く象は60頭以上いる。また、年取って働けなくなった象や、三歳以下の象、赤ちゃん象を抱えたお母さん象、病気の象などもその背景には存在する。というわけで、アユタヤの象村には100頭を越える象が暮らしている。象は生き物だから、働けなくなったからって捨てるわけにも行かないのだ。場所は、かつて王様が軍隊や王宮で使う象を野生の象たちから選んだという施設ロイヤル・クラールの隣接地で、東北部イサーン出身の象使いの親分が国から借りている。バンコクの街をうろついていた野良象もイサーン出身なので、ここに送られて来るらしい。ここには、まだ働けない幼い赤ちゃん象も何頭かいる。「やっと象が増えて来たの」と語るのは、ここに嫁いできた日本娘のアキさん。仕事があり、政府からも保護されているアヤタヤの象村は、飼い象たちの楽園なのかも知れない。
繁殖しているのは象だけじゃない。子供もたくさんいた。土曜日ということで、みんな象に乗って遊んでいる。子供には仔象をあてがって、いっしょに育つと聞いていたんだが、今では象使いの子供も学校に行くので、卒業するまでは引退したお婆さん象と遊んでいる。また、仔象も三歳までは母親といっしょに暮らしている。お婆さん象は優しいので、子供の乱暴なしうちにも耐えて、水浴びしたり村を歩きまわったり、余生を楽しげに過ごしている。なお、この村にはアキさんだけでなく、日本に出稼ぎに行ったことのある象や象使いもいる。サーカスで二年半、日本中をまわったそうで片言の日本語をしゃべったりする。象使いの勉強もさせてくれるそうで、「象に会いにタイに行く」なんて人にはうってつけだろう。象使い体験は一日から一週間、一ヶ月と、いろいろ。希望者は下記アドレスまでメールを。
                                    elephant@ksc.th..com 日本語も可。
アユタヤは二日間。とりあえず子供たちに制服を着せて象のうえに並べてみたり、水浴びさせたりと、いろいろやってみる。巨大なお婆さん象と小さな子供というのも、なかなか絵になる景色だ。象使いたちは貧しいので、子供たちもオモチャなんか買えない。象が唯一のオモチャなのだ。特に水浴びのシーンでいい絵が撮れた。子供たちがほっといても象の背中から水に飛び込んでくれる。おいらは、手抜きというわけでもないがシグマのDC18-125という高倍率ズームで、広角から本格的な望遠域まで一気に持って行ける。平川氏はキヤノンのフルサイズデジに明るい望遠単焦点Lレンズとマニアックな装備だ。おいらは象の周囲を走りまわり、平川氏はちょっと離れたところから雰囲気写真を狙う。
夕方になると象がセックスしはじめた。というか、象使いたちが交尾させているのだ。事前に日本で調べたところでは、飼い象の繁殖はきわめて難しい、などと言われているのだが、この象村の象使いたちは先祖代々、何千年も象と暮らしてきたベテラン。繁殖の方法もよく知っている。タイでは1965年以降、野生の象を捕まえるという作業は行なわれていないので、こうして数を増やすしかない。また、ジャングルも切り開かれて農地になっているので、今では野生の象より飼い象のほうが多い。飼い象は、かつては木材伐採とか土木作業とかに使われていたのだが、今では観光客の相手をするのが主な仕事である。バンコク周辺ではローズガーデン近郊にも象をたくさん飼っている施設があるし、チェンマイにも観光客相手の象の施設がある。そのどこも100頭程度は居そうだ。また、ここ、アユタヤの象村ではリゾートホテルや海外巡業に象を貸し出すという商売もやっている。先祖代々、人と暮らしてきた象たちも、その生き方を時代の要請に合わせて変えざるを得なくなっているのだ。

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